#033 音楽著作権に関係する主な登場人物(その29)「著作権使用者」(14)「ミュージックビデオを製作する人たち」(3)

何度か見ていただいている参考イメージ図「音楽著作権使用料の一般的な流れ」の「その他」にはどんな人がいるかを見ています。前回は「ミュージックビデオを製作する人たち」について、「映画の著作物の著作者」を説明しました。

ミュージックビデオの「著作者」、つまり「映画の著作物の著作者」になることができるのは、「映画の著作物」の形成に際するさまざまな表現行為を行う者のうち、「制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者」だということを見てきました。

「『著作物』を創作した時点で『著作物』を創作した人が『著作物』の『著作者』となる」というのが原則的な取扱いですが、これは、著作権法上の規定による例外的な取扱いと考えられます。

今回はミュージックビデオが製作される段階からのことについての説明のうち、「映画の著作物の著作権者」について説明します。ミュージックビデオの「著作権者」は誰を言うのかという内容です。

<参考:イメージ図「音楽著作権使用料の一般的な流れ」>

<原則として、「映画製作者」が「映画の著作物の著作権者」>
今まで、「『著作者』が、『著作物』を創作した時点で、原則として『著作権者』となる」という趣旨の説明をしてきました(例えば、拙稿#006)。

「映画の著作物の著作権者」は、「映画の著作物の著作者」の場合と同様、この原則に対する例外です。

改めて、誰が「映画の著作物の著作権者」となるのでしょうか?

結論から言うと、この答えは、原則的に、通常、「映画の著作物の著作権者」は「映画製作者」であるといいます。

「映画の著作物の著作者」の説明のとき、映画の製作に関与する多くの創作者のうち、一定の創作者に限って(数を限定して)「映画の著作物の著作者」と認めていると説明しました。それでも多くの人数の「映画の著作物の著作者」が出現する可能性があります。

そのため、「映画の著作物の著作者」の全員に著作権を認めると映画の円滑な流通が確保されないおそれがあり、法律の規定を策定して権利者の数を限定するとき、「映画製作者」が「映画の著作物の著作権者」として最も適当であると考えられたためとされています。例えば、劇場用映画の場合、「映画製作者」が、企業活動として、巨額の製作費を負担し製作・公開・収益することが多く見られますが、これも「映画の著作物」に例外的な取扱いを行っている理由とすることがあります。

(劇場用映画の沿革的な背景の下のルールですが、ミュージックビデオなど、劇場用映画以外の「映画の著作物」に関わる背景とはやや異なるかもしれませんし、それほど多くの関係者がいない映画の状況とも異なるかもしれません。)

<「映画製作者」とは誰か?>
「映画製作者」とは、著作権法では、「映画の著作物の製作に発意と責任を有する者」をいいます。これは、「映画の著作物を製作する意思を有し、製作に関する権利義務が帰属する主体であって、その著作物の製作に関する経済的な収入・支出の主体ともなる者」であると考えられています。この場合、「映画製作者」は、創作に寄与する必要はありません。

ミュージックビデオの場合、ミュージックビデオを製作する意思をもって、製作の費用を負担して経済的なリスクの負う人が、原則として、ミュージックビデオの「著作権者」となると考えられるということです。

例えば、「楽曲」をレコーディングして「レコード原盤」を作成したけれども、まだミュージックビデオがないときに、スポンサーが現れて、「お金を出すからミュージックビデオを作らない?」と言われた場合には、そのスポンサーが「映画の著作物」であるミュージックビデオの製作に「発意と責任」を有する者として、「映画製作者」となり、「映画の著作物の著作権者」となると考えることがあるということです。

ただ、出資だけで「発意と責任を有する」と言えるのかとか、「映画製作者」と言えるためには、必要なスタッフや資材を選定しその費用を支払うことを含め、制作の現場を仕切るくらいの関与がなければいけないのではないかとかの議論があり、製作過程で出資者と制作プロダクションが別の場合は、制作委託契約などで「映画の著作物の著作権」の帰属を明確にすることが行われることもあります。この点については、今回はこの説明にとどめ、別の機会に詳しく説明します。

また、「製作」と「制作」の違い(「衣へん(コロモヘン)」の有無)などが議論される場合もありますが、これも別の機会に説明します。

<「映画製作者」と「レコード製作者」との対比>
「レコード製作者」がミュージックビデオを「発意と責任」をもって製作するときは、「レコード製作者」がミュージックビデオの「著作権者」となります。

ところで、「レコード製作者」は音源の最初の録音物(レコード原盤)を、自身の費用と責任で制作した人(著作権法では、「レコードに固定されている音を最初に固定した者」)ですが、「レコード製作者」は楽曲の著作権者とはなりませんでした。その代わり、「レコード製作者」として「レコード製作者の著作隣接権」が認められていると説明しました(拙稿#019など)。

この点は、「映画製作者」には「著作権」(=「映画の著作物の著作権」)を認め、「レコード製作者」には「著作隣接権」(=「レコード製作者」の「著作隣接権」)を認める、という両者の取扱いの違いと見ることができます。

<「『映画製作者』が『映画の著作物の著作権者』」をもう少し詳しく>
ここまで、原則として、「映画製作者」が「映画の著作物の著作権者」であると説明してきました。

著作権法では、「映画の著作物の著作権」は、「映画の著作物の著作者」が「映画製作者」に対しその「映画の著作物」の製作に参加することを約束しているときは、その「映画製作者」に帰属すると定めています。

ここでの規定は、「映画製作者」が「映画の著作物の著作権者」となるためには、「映画の著作物の著作者」が「製作に参加すること」を約束していることを必要とするものです。この約束は、契約書を取り交わすことでも良いですが、単なる口頭での約束でも良いとされています。

なお、「映画の著作物」が職務著作となる場合は、「映画の著作物の著作者」となる会社などが「映画の著作物の著作権者」となります。

<次回の予告>
次回も、「ミュージックビデオを製作する人たち」の続きです。

(次回もよろしくお願いします!)

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