#034 音楽著作権に関係する主な登場人物(その30)「著作権使用者」(15)「ミュージックビデオを製作する人たち」(4)

何度か見ていただいている参考イメージ図「音楽著作権使用料の一般的な流れ」の「その他」にはどんな人がいるかを見ています。

「ミュージックビデオを製作する人たち」について見てきていますが、今まで、著作物の種類として考えると、ミュージックビデオが「映画の著作物」と考えられることを、また、そのことから、その著作者や著作権者が誰かを見てきました。

今回は、今までの説明の若干の補足です。

結論として言うと、今回は、ミュージックビデオの作成の際には、そこに携わる人たち、特に創作活動に関与する人たちとの間では、しっかりとそれぞれの役割を決めておくとともに、完成したミュージックビデオをどのように使うかについての情報を共有することが望ましいということの説明です。

<参考:イメージ図「音楽著作権使用料の一般的な流れ」>

<「ミュージックビデオの著作者」についての振り返り>
前回までの説明を振り返ります。

「ミュージックビデオの著作者」、つまり「映画の著作物の著作者」になることができるのが、「映画の著作物」の形成に際するさまざまな表現行為を行う者のうち、「制作、監督、演出、撮影、美術等を担当してその映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者」であること、このような「映画の著作物の著作者」を「モダンオーサー」ということがあることを説明しました。

また、ミュージックビデオの基となる「楽曲」の「作詞家・作曲家」は、「ミュージックビデオの著作者」にはならないとも説明しました。

「楽曲」の「作詞家・作曲家」が「ミュージックビデオの著作者」にならない理由は、その「楽曲」が「映画の著作物」であるミュージックビデオにおいて「複製」(あるいは「翻案」)された「著作物」であり、そのような「著作物」の「著作者」は「映画の著作物の著作者」ならないとされているためでした。

「楽曲」の場合は「複製された著作物」ということでしょうが、原作の小説や脚本があれば、「翻案された著作物」として同様の取扱いになると考えられます。

そして、このような「著作者」(「ミュージックビデオの著作者」とならない「著作者」)をクラシカルオーサーということがあると説明しました。

<「クラシカルオーサー」と「モダンオーサー」>
「クラシカルオーサー」と言うとき、その「著作者」は「映画の著作物の著作者」(= モダンオーサー)ではないと考えるのが一般的な状況だと思います。ただ、通常は「クラシカルオーサー」と考えられる「著作者」も、ミュージックビデオの「全体的形成に創作的に寄与」しているときには、「映画の著作物の著作者」(= モダンオーサー)と考えることができる場合もあるのではないかと考えられます。

「制作、監督、演出、撮影、美術等」や「小説、脚本、音楽その他の著作物」は、モダンオーサーとクラシカルオーサーを分ける判断基準ではなく、例として示されたものと考えられます。

そのため、美術担当だから自動的にモダンオーサーとして「映画の著作物の著作者」とされるものではなく、「映画の著作物の著作者」とするには、あくまで「映画の全体的形成に創作的に寄与」しているかどうかを判断する必要があるということでしょう。

<「ミュージックビデオの著作者」(= モダンオーサー)であることの効果とは?>
前回見たように、「映画の著作物」の「著作権者」は、通常の場合、「映画の著作物の著作者」ではなく、「映画製作者」です。

「映画の著作物の著作権」のうち「お金を受け取る権利」(=「財産権」)は、この「映画製作者」が持つことになります。一方で、「映画の著作物の著作者」は、その意に反する「映画の著作物」の改変や氏名表示に関する権利を持つことになります。

「ミュージックビデオの著作者」とされれば、その意に反してミュージックビデオを改変されない権利(同一性保持権)やクレジット表記など氏名表示に関する権利(氏名表示権)を持つことになります。

つまり、「ミュージックビデオの著作者」であるかそうでないかの効果としての違いは、この権利を持つか持たないかの違いだということでしょう。

ミュージックビデオに脚本があり、その脚本に基づいてミュージックビデオが撮影されたとき、その脚本を書いた脚本家が「ミュージックビデオの著作者」でない場合は、出来上がったミュージックビデオに意に反する改変がなされても「ミュージックビデオの著作者」としては文句を言うことができないということです(場合によっては、「脚本家」として文句を言うことができるとは思います)。

<「ミュージックビデオの著作者」であるかどうかの基準とは?>
ダンスの振付けは、創作的である(著作物性がある)場合、「舞踏又は無言劇の著作物」と考えられます。

クラシカルオーサーとモダンオーサーについて言えば、具体的な制作現場の状況や役割などによって異なりますが、例えば、全編でダンサーがダンスするミュージックビデオで、ダンスの振付けが創作的(著作物性があり)で、振付師がミュージックビデオの「全体的形成に創作的に寄与」している場合は、その振付師は「ミュージックビデオの著作者」(= モダンオーサー)と考えられるかもしれません。

これも、この振付師が単にクラシカルオーサーとして振付けを提供し、制作現場でこの振付師が不在のままミュージックビデオが作られた場合は、「ミュージックビデオの著作者」(= モダンオーサー)とならないと考えられるかもしれません。

「制作、監督、演出、撮影、美術等」や「小説、脚本、音楽その他の著作物」に例示されているものもそうでないもの(例えば、舞踏又は無言劇)も、結局は、実際にミュージックビデオの「全体的形成に創作的に寄与」しているかどうかを判断するということでしょう。

<事前に決められるところは、しっかりと事前に決めておきましょう>
ただ、ミュージックビデオが出来上がった後(事後的)にそうした判断をすると、関係者同士の思いの違いが出てくることが多いので、ミュージックビデオの作成過程の中での役割をあらかじめしっかりと関係者間で同意しておくことが望ましいでしょう。

また、その際には、「ミュージックビデオの著作権者」となる人(著作権法上で、通常、「映画製作者」と呼ばれる人)は、「ミュージックビデオの著作者」となる人(たち)と、作成するミュージックビデオを、完成した後に、どのように使うのかについての情報をあらかじめしっかりと共有して、ギャラなどの対価を決めることが望ましいでしょう。

<次回の予告>
次回も、「ミュージックビデオを製作する人たち」の続きです。

(次回もよろしくお願いします!)

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