#006 音楽著作権に関係する主な登場人物(その2)「作詞家・作曲家」(2)

前回は、「音楽著作権に関する主な登場人物」のうち、1番に考えられるべき存在として、「作詞家・作曲家」について説明しました。今回はその続きです。

<作詞家・作曲家(著作者)と著作権者>
インディーズの音楽クリエイターやアーティストの皆さんが「作詞家・作曲家」として歌詞や曲を作った時点で、その作品は「著作物」となること、「作詞家・作曲家」は、職務著作の場合を除き、原則として、「著作者」となることを前回は説明しました。

そして、「著作者」は、原則として、「著作権者」となる、と前回、予告として説明しましたが、今回はこの点をもう少し詳しく説明します。

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<「著作者」と「著作権者」は意味が異なります>
「著作者」と「著作権者」とは言葉が似ているので、よく混同しがちですが、実は意味は異なります。「権」という字が入っているか入っていないかの、小さな違いなのですけれども、ここがポイントなのです。

• 「著作者」とは「著作物を創作する者」のこと、
• 「著作権者」とは「著作権を保有する者」のこと
でしたね。

混同しがちなのは、「著作者」が、著作物を創作した時点で、原則として「著作権者」となるということから、当初は、「著作者」=「著作権者」の関係が成り立つため、特にこれら2つの言葉の違いを気にしないことがあるのが理由かもしれません。

また、著作権法が「著作者の権利」を定めることを目的として、「著作権」について細かく定めていることもその理由の1つかもしれません。

(著作権法は、著作者の権利を定め、文化的所産の公正な利用に留意しながらも、この権利の保護を図り、文化の発展に寄与することを目的としていますが、「文化の発展に寄与」とは、著作者の創作意欲を法律上も保護するということを意味しています。)

しかし、実は、「著作者」と「著作権者」が異なる場合は案外多いのです。

<著作権のうち「お金を受け取る権利」は第三者に譲渡ができます>
それでは、「著作者」と「著作権者」が異なる場合とはどんな時でしょう。

著作者は「著作物が利用された時にお金を受け取る権利」や「自分の創作した楽曲やタイトルについてその意に反する改変を禁止する権利」などを持つ、と前回説明しましたが、このうちの「お金を受け取る権利」は、第三者へ譲渡することができ、また、相続の対象とすることができます。

そのため、「著作者」が当初保有していた「お金を受け取る権利」を第三者に譲渡などした場合は、その譲渡などを受けた第三者が「著作権者」となるわけです。

「実は、『著作者』と『著作権者』が異なる場合は案外多い」とは、音楽著作権の場合、作詞家・作曲家が音楽出版社や著作権等管理事業者に「お金を受け取る権利」を譲渡するという取扱いが、実務上、行われているからです。

この取扱いにしたがって、作詞家・作曲家は音楽出版社や著作権等管理事業者を通じて、著作物が利用された時に利用者が支払うお金(著作権使用料)を受け取ることが行われています(「音楽出版社」や「著作権等管理事業者」については次回以降説明しますね)。

<「著作者の権利」には2種類ある!>
今まで読んでいただいて、「著作権」には(厳密には「著作者の権利」には)、
• 「著作物が利用された時にお金を受け取る権利」といった「著作者がお金を受け取ることに関係する権利(著作者の財産的利益を保護する権利)」=「財産権」と、
• 「自分の創作した楽曲やタイトルについてその意に反する改変を禁止する権利」といった著作者の人格的利益を保護する権利=「著作者人格権」
という2つの側面があるとお感じになった方もいらっしゃるかと思います。

先ほど、「お金を受け取る権利」を第三者に譲渡できると説明しましたが、同じ著作者の権利でも「著作者人格権」は譲渡できないということに、ここでは、一応注意をしておいてください。このブログでは、しばらくは「著作者の権利」のうち「お金を受け取る権利」=「財産権」の部分について説明し、「著作者人格権」については別の機会に詳しく説明することにします。

<「著作権は創作した時点で発生する」けれども・・・>
さて、何度か、著作権は創作した時点で発生すると説明しています。「著作権」は特許権などといった「知的財産権」のうちの1つですが、取扱いは異なります。

他の「知的財産権」について勉強する必要はここでは必要ありませんが、1つだけ説明しておきたく思う点があります。

特許権などといった他の「知的財産権」が、権利を取得するために、特許庁長官に出願し登録を受けることを必要とするのに対し、「著作権」は著作物の創作という事実があれば、その時点で著作権という権利が発生し、著作者は権利を取得します。

また、権利の発生のために、登録や特定の表示(例えば©表示といったもの)を必要としないことを「無方式主義」といい、現在では世界中のほとんど国で、著作権については、この「無方式主義」が取られています。

よく「JASRACに登録する」ということが言われますが、JASRACのサイト「著作権信託契約と入会Q&A」の「Q1.」でも説明がされているとおり、JASRACは著作権の登録機関ではありません。「登録する」ではなく「JASRACに作品を届け出る」という言い方が適当ではないかと思いますが、JASRACなどに届け出ていても届け出ていなくても、著作権自体は発生していることに変わりはありません。

ただ、「著作権は創作した時点で発生します」と説明しましたけれども、発生したとして権利もそのまま放っておいても何もならない(ことが多い)です。つまり、発生した権利を管理したり、利用を促進したりすることで、ようやく「お金を受け取る権利」がモノを言ってくるのです。

この点、「音楽著作権」に関しては、比較的、「作詞家・作曲家」といった音楽クリエイターやアーティストが著作者として実効的に守られる仕組みが整備されています。次回以降では、「作詞家・作曲家」をサポートする人たちに登場してもらいます。

<今回のおさらいとして・・・>
ということで、今回のおさらいとして、もういちど、前回と今回のブログを振り返ってみると・・・。

• 「作詞家・作曲家」(楽曲を創作する人)は、原則として、「著作者」(著作物を創作する者)である。
• 「作詞家・作曲家」=「著作者」は、原則として、「著作権者」(著作者の権利を保有する者)である。
• 「著作権」のうち、「お金を受け取る権利」は譲渡や相続が可能である。
• 「著作権」は創作の時点で発生し、登録などの手続きが不要である。
• ただ、発生しただけでは著作者の権利はあまりモノを言わないが、音楽著作権にはそれを実効的に守る仕組みが整っている。

<補足として(1)・「編曲者」と「訳詞者」>
「作詞家・作曲家」と同じく、「編曲者」や「訳詞者」も「著作者」ではないのか、という疑問を持たれる方もいらっしゃると思います。「編曲者」や「訳詞者」も「著作者」ではありますが、彼らについては別途説明します。

<補足として(2)・「映画の著作物」>
冒頭から「著作者は原則として『著作権者』となる」と説明していますが、例外として挙げられるのは「映画の著作物」です。

「映画の著作物」の場合の「著作者」は、原則として「映画の著作物の創作的に寄与した者」とされ、「著作権者」は、通常の場合、「映画製作者」つまり「映画の著作物の製作に発意と責任を有する者」をいいます。

音楽に関して言うと、ミュージックビデオなど映像を伴う作品は「映画の著作物」として扱われますので「音楽著作権」と「映画の著作物」の関係については、別途、説明する機会を設けることにします。

(「作詞家・作曲家」が最重要登場人物なので、一通りの説明の後、再び戻ってきます。次回は、音楽著作権に関係する主な登場人物である「音楽出版社」について説明します。次回もよろしくお願いします!)

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