#016 音楽著作権に関係する主な登場人物(その12)「編曲家」(2)

前回は、いわゆるアレンジャーが登場する楽曲・音源の制作プロセスについて考えてみました。

そこで、アレンジャーに著作権が発生するか、発生するとすればどんな権利か、インディーズの音楽クリエイターやアーティストの創作・制作活動ではこれらをどのように考えることができるか、また、アレンジャーが行うことをアレンジメントとするならば、アレンジメントと編曲は同じでしょうか、異なるでしょうかという問いを提起しましたが、今回はこれらを考えてみます。

<そもそも「編曲」とは?>
その場合、そもそも「編曲」とはどういうことでしょうか。

(「編曲」については、後の回で詳しく説明しますので、ここでは、「法律でいう編曲」と「いわゆるアレンジャーが行うアレンジメント」の同異点について感覚的に理解していただければ良いと思います。)

少し法律上の話になります。

著作者が創作した著作物を「原著作物」とすると、その「原著作物」を元に、二次的著作物を創作することがあります。

この場合、「二次的著作物を創作する」こととは、「原著作物の本質的な特徴を維持しつつ、具体的表現に改変を加え新たな創作性を加えることにより、原著作物の表現上の本質的な特徴を直接感じることができる別の著作物を創作する」ことであると判例が示しています(後のほうのカッコ内は、筆者が判例を少しだけわかりやすく書き直しています)。

「編曲」とは、「音楽著作物」に関する「二次的著作物の創作」で、言い換えると「音楽の著作物を改編すること」をいいます。

先ほどの「二次的著作物を創作する」ことの説明を、「音楽著作物」を対象にして言い換えると、「作曲家」が作曲した「原著作物」つまり「元の楽曲」に対し、改変を加えることのみならず、新たな創作性を加えることも行いながら、「元の楽曲」の特徴を感じさせる「別の楽曲」を創作することが、法律上の「編曲」です。

「編曲」は、編曲をする権利を持つ者(原著作者あるいはその権利を譲り受けた者)の許諾に基づいて、行われます。そして、その「編曲」を行う者を「編曲者」(「編曲家」)といいます。「編曲家」は「編曲」により創作された「二次的著作物」の著作者としての権利を持つことになります(「原著作物」の著作者も、「二次的著作物」に関して、同じ権利を持つものとされます)。

なお、JASRAC、NexToneなどの著作権等管理事業者に著作権の管理委託をしている場合でも、「編曲」の許諾は、著作権等管理事業者ではなく、対象となる楽曲の管理を行っている音楽出版社(音楽出版社が管理していない場合は著作権者本人(著作者本人の場合もあります))が行うことになります。「編曲」や「訳詞」など、著作物の翻案・翻訳に関わる点は、他の音楽著作権の許諾の取扱いと異なることに注意が必要です。

以下では、いま説明した「編曲」を「法律でいう編曲」ということにします。

<「アレンジメント」と「法律でいう編曲」>
さて、前回は、「新規の楽曲の創作・制作プロセス」と「既存の楽曲の制作プロセス」を通して、いわゆるアレンジャーの役割を説明しました。

「新規の楽曲の創作・制作プロセス」では、「作曲家」が書いたメロディーを世の中の人に聴いてもらえる状態にする制作プロセスを説明しました。

この制作プロセスを「アレンジメント」とすると、これは「法律でいう編曲」である場合もあります。「作曲家」とともにメロディーを完成させる創作プロセス(例えば、トラックメイカーがトラックを制作するプロセス)も含んでいるとすれば、その制作プロセスは「作曲」であるともいえます。

「既存の楽曲の制作プロセス」では、既存の楽曲の楽器構成やボーカル面で歌手の特徴を楽曲に反映させたりすることがありますが、それらを「アレンジメント」とすると、これも「法律でいう編曲」である場合があります。

<音楽著作権管理における「編曲」の取扱いについて>
音楽著作権管理における「編曲」の取扱いについては、JASRACの「編曲(訳詞)の著作権に関する質問」(FAQのページ)にも説明があるように、通常、2つの方法があるとされます。

1つは、新規の楽曲の場合、作品が初めてCDなどの録音物として発売される時点に施された編曲で、「公表時編曲」といいます。作品届提出時に公表時編曲者として届けられた編曲家について、編曲の著作者の権利が管理される制度です(カラオケ歌唱による演奏使用料の1/12が分配されます)。なお、この制度はJASRACの会員・信託者にのみ適用されます。

もう1つは、既存の楽曲の場合に、JASRACに編曲届・作品届・原曲譜・編曲譜を提出し、「編曲審査委員会」の審査を経て理事会で承認される編曲です。法律上の二次的著作物としての独創性を有するものを編曲著作物として取り扱うことを原則とします。

いわゆるアレンジメントのうちには、ワンタイムのギャランティにより、アレンジャーがアレンジメントを依頼されて行うものが多く、上の2つの取扱いによらないものが多いのが実情です(上の2つの取扱いは、あくまでJASRACから編曲者として著作権使用料の分配を受ける場合の取扱いで、必ずしもアレンジャーに著作権を認めないというものではありません)。

今の段階では、インディーズの音楽クリエイターやアーティストの創作・制作活動でも、アレンジャーにワンタイムのギャランティを支払って依頼するアレンジメントが多いでしょうか。その場合でも、アレンジャーが新規楽曲の創作の大きな一部を担っているとき(例えば、トラックメイカーがメロディーメイカーとともに大きな役割を演じているとき)には、アレンジャーも作曲者(著作者のうちの1人)として取り扱われることがあるでしょう。

(次回もよろしくお願いします!)

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