#017 音楽著作権に関係する主な登場人物(その13)「訳詞家」

前回は「編曲家」についてみました。音楽の著作物は、曲だけのものと、曲に歌詞を伴うものとがありますが、今回は音楽著作物の「二次的著作物の創作」のうち、歌詞に関する創作の役割を果たす「訳詞家」について考えてみます。

インディーズの音楽クリエイターやアーティストの皆さんが、外国語曲を日本語詞でカバーする場合などに関係してくる話題だと思います。

<「編曲」と同様に、「訳詞」もオリジナル楽曲の「二次的著作物の創作」>
前回、「編曲」について、単なるアレンジメントとは区別して、「法律でいう編曲」として説明しました。その中で、「編曲」とは、「音楽著作物」に関する「二次的著作物の創作」で、言い換えると「音楽の著作物を改編すること」をいうと申し上げました。

「訳詞」ということを考えるとき、「編曲」は、音楽の著作物のうち、曲の部分に関する改編ということになりますが、「訳詞」は、音楽の著作物のうち、歌詞の部分に関する改編ということになると思います。

外国語詞を、日本語で歌う際にメロディーに乗るように日本語に翻訳したり、場合によっては、外国語詞の逐語訳ではなく、あまり関係ない日本語の歌詞をつけたりと、「訳詞家」は「二次的著作物の創作」を行います。

「編曲家」の説明の際には「楽曲の創作・制作プロセス」と「既存の楽曲の制作プロセス」とに分けて考えましたが、「訳詞」の場合は、通常は、既に外国語詞の楽曲が創作された後のプロセスでしょうし、「訳詞家」がオリジナル楽曲の創作プロセスに関わっている状況でもないでしょうから、「編曲家」の説明のような場合分けは行わないことにします。

<「訳詞」と著作権者の許諾について>
また、「編曲」は、編曲をする権利を持つ者(原著作者あるいはその権利を譲り受けた者)の許諾に基づいて行われるということも申し上げました。

「訳詞」でもこの点は同じで、「訳詞」は、訳詞をする権利を持つ者(原著作者あるいはその権利を譲り受けた者)の許諾に基づいて行われます。

「編曲」の説明の際に、「JASRAC、NexToneなどの著作権等管理事業者に著作権の管理委託をしている場合でも、『編曲』の許諾は、著作権等管理事業者ではなく、対象となる楽曲の管理を行っている音楽出版社(音楽出版社が管理していない場合は著作権者本人(著作者本人の場合もあります))が行うことになります」と説明していますが、これは「訳詞」の場合も同じです。

「編曲」や「訳詞」など、著作物の翻案・翻訳に関わる点は、他の音楽著作権の許諾の取扱いと異なることに注意が必要であることは、改めて申し上げます。

外国語曲が海外の曲である場合でその著作権が存続している場合は、著作権の管理を行っている海外の音楽出版社(オリジナル・パブリッシャー)(OP = 原出版社)、あるいは、通常は、日本にあるその音楽出版社のサブ・パブリッシャー(SP = 下請出版社)に許諾を得ることになります(つまり、許諾が下りない場合は、「訳詞」をつけることはできないということになります)。

オリジナルの外国語曲の著作権が消滅している場合は、それらの許諾は必要ありません(その場合でも、既に日本語詞があり、その日本語詞に改編を加える場合には、オリジナル日本語詞の訳詞家からの許諾が必要となることになると思います)。

<「訳詞」の許諾が下りたとき・「訳詞者」の権利>
SPなどを通じ「訳詞」の許諾をお願いするわけですが、その際には、訳詞である日本語詞にその日本語詞の現地外国語訳をつけて出来上がりを見てもらうことがあります。このようなプロセスを経て許諾が下りた場合、「訳詞者」の権利はどのようになるでしょうか。

「訳詞」は、「原著作物」である「音楽著作物」の「二次的著作物の創作」ですから、「訳詞家」にも「訳詞者」として著作権が与えられます。「二次的著作物」としての「訳詞」を著作権等管理事業者に管理委託する場合には、例えばJASRACの場合は「訳詞届」を提出し(JASRACの「編曲(訳詞)の著作権に関する質問」(FAQのページ))、原則として、訳詞が使われた場合にのみ、「訳詞家」に著作権使用料が分配されます。

ただ、「訳詞家」がOPや原著作権者(オリジナル楽曲の著作権者)に訳詞の著作権を譲渡することを許諾の条件としている場合や、レコード会社などが「訳詞家」から訳詞の著作権を、訳詞のギャラなどを対価として、買い取る場合などは、「訳詞家」の著作権をそのまま譲渡しますので、その際は、通常、「訳詞家」に著作権使用料は分配されない取扱いとなるでしょう。

(次回もよろしくお願いします!)

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